原子吸光分析方法とはどのような分析方法ですか?

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【質問】原子吸光分析方法とはどのような方法ですか?

作業環境測定で出てくる「原子吸光分析方法」とは何ですか?どのような分析方法ですか?

【回答】原子吸光分析は、原子に光を照射して吸収された光の強さから定量を行う方法です

原子吸光分析は、原子に光を照射して励起させることで試料中の元素を定量する分析方法です。

原子吸光分析方法とは

原子吸光分析方法とは、基底状態にある原子にその原子特有の波長の光を照射して原子を励起状態に励起させることで試料中の元素を定量する分析方法です。

フレームや電気加熱などの熱により試料を原子の蒸気としたのち、その原子蒸気層中の基底状態にある原子が吸収する特定の波長の光を照射します。そのときに吸収された光の強さから吸光度を求め、試料中の元素濃度を定量します。

原子吸光分析の特徴

原子吸光分析法は、微量から極微量の金属元素の定量分析に多用され、試料の形態に囚われることなく定量できるという特徴をもっています。また、共存元素やイオンの影響が比較的小さく、選択制の良い分析方法です。

原子吸光分析の留意事項

多元素を同時に分析できないので、定性分析には適しません。

原子吸光分析の装置の基本構成

原子吸光分析の装置の基本構成は、「光源部」「試料原子化部」「波長選択部」「測光部」から構成されています。以下、それぞれについて解説を記載します。

光源部

光源には同種の原子より発する線幅の狭い発光スペクトル(共鳴線)が用いられます。このための光源として、中空陰極(ホロカソード)ランプ、金属蒸気放電ランプ及び無放電ランプなどがあります。

試料原子化部

原子化の方法には、分析対象の分子又はイオンを熱解離させ原子の蒸気を生成させる「熱解離による原子化方法」、化合物を化学的に還元して金属の蒸気として発生させる「還元気化法」があります。

「熱解離による原子化方法」には、バーナーを用いる「フレーム法」と黒鉛炉内で電熱加熱する「フレームレス法」があります。

「フレーム法」では、噴霧室に噴霧された試料溶液は燃料ガス・助燃ガスと混合されてバーナーに送られ、燃焼によって原子蒸気になります。

「フレームレス法」では、電気的に加熱して原子化させるために使用する炉として黒鉛炉やタングステン炉があります。

「還元気化法」は、フレーム法では原子化が困難であり、黒鉛炉法では揮散しやすいようなAs,Sb,Sn,Te,Seなどの化合物に用いられます。

波長選択部

光源ランプから放射される輝線スペクトルの中で目的元素の共鳴線のみを分離するために、プリズムや回折格子を備えた分光器が用いられます。

測光部

吸光光度分析法の分光器に用いられているものとほとんど同じです。

原子吸光分析方法と発光分析方法の違い

原子吸光分析法法が基底状態にある原子を対象としているのに対して、発光分析方法は励起状態にある原子を対象にしています。

原子吸光分析方法が関連する法令

原子吸光分析方法が関連する法令を紹介します。

令第21条第7号に掲げる作業場の濃度の測定は、別表第1の上欄に掲げる物の種類に応じて、それぞれ同表の中欄に掲げる試料採取方法又はこれと同等以上の性能を有する試料採取方法および同表の下欄に掲げる分析方法又はこれと同等以上の性能を有する分析方法によらなければならない。

作業環境測定基準第10条(抜粋)
物の種類試料採取方法分析方法
コバルト及びその無機化合物ろ過捕集方法原子吸光分析方法

参考文献

作業環境測定のための分析概論(公益社団法人日本作業環境測定協会)

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