なぜ、新人は労災に被災しやすいのですか?

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【質問】新人が労災に被災しやすいのは何故ですか?

新人や経験が浅い従業員が労災に被災しやすい傾向があります。何故ベテランは被災せず、経験が浅い従業員が被災しやすいのでしょうか?

【回答】人間は習熟により行動モデルが変わるためです。

人間の行動は習熟するごとに「ナレッジベース」⇒「ルールベース」⇒「スキルベース」の行動に変化します。

作業になれたベテランは「スキルベース」の行動を行っており、作業が正確で安全です。

一方、新人や初めての作業・非定常の作業は「ナレッジベース」の行動となり、作業が遅く誤りが発生しやすいです。

人間の行動モデル

人間が行動する場合は、外部からの情報を脳が知覚し、その情報内容を認識し、判断し、どのような行動をとるべきか決定して、手足などの操作機能に指令しています。

この「認知」「判断」「行動」の流れを3つに区分した「SRKモデル」がJ.Rusmussenにより提唱されています。「SRK」の意味は、「Skill(スキル)」「Rule(ルール)」「Knowledge(ナレッジ)」 の頭文字です。

スキルベースの行動(Skill-Based Behavior)

スキルベースの行動とは、慣熟又は習熟している場合の行動で、人間が同じ行動を繰り返すことによって身についた行動です。作業を熟知したベテランの作業は、スキルベースの行動です。スキルベースの行動は、素早く滑らかな動作が可能であり、機械やシステムの運転においては、ほぼ無意識にその操作を行うことができます。歩きながら話をしたり、転びそうになったりすると手を出して体を支えようとするような、いくつかの行動をほぼ同時にこなせる状態です。

スキルベースの行動は、同じ作業を何度も経験したベテランの行動モデルです。人間が持っている「できるだけ簡易に対応したい」という省エネルギー型の生体適応反応により、無意識化でも正確な作業ができるようになります。

スキルベースの行動は早く正確に円滑にかつ疲労も少なく行動できますが、無意識で行動を行うため「不注意」や「ポカミス」が発生することがあります。

ルールベースの行動(Rule-Based Behavior)

ルールベースの行動とは、ある程度の経験がある場合、あるいは、ある決まりや規則を学習している段階の行動です。この行動を繰り返して習熟すると、上記の「スキルベースの行動」に変化します。

チェックリストを使用して作業を行う場合、チェックリストを確認しながら行動するため「ルールベースの行動」と言えます。その行動を繰り返していくうちに、チェックリストを見なくても作業ができるようになり、「ルールベースの行動」から「スキルベースの行動」へ移行したことになります。

ルールベースの行動では、ルールを誤って適用したり、悪いルールを適用するといったミスが発生することがあります。

ナレッジベースの行動(Knowledge-Based Behavior)

ナレッジベースの行動とは、入力情報に対してその都度考えて行動する状態です。未経験の事態に対しての行動であり、一度に1つの行動しかできず時間もかかります。

人間の中枢処理過程を経て物事を認知し、動作を決定・行動するため、最大限の意識と思考を持って行動を行う必要があります。新しい機械やシステムの操作では、マニュアルを読んで新たな知識を得て行動することになります。

ナレッジベースの行動では、目前の事象にとらわれて全体を見失ったり、先入観にとらわれたり、自分の知識を過信して異常を見逃したり、誤った決断をしたりすることがあります。

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