不安全行動の分類方法と、それぞれの不安全行動に効果的な対策について教えてください。

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【質問】不安全行動の分類方法と、それぞれの不安全行動に効果的な対策について教えてください。

不安全行動が要因の労災が多く発生しています。対策をしたいのですが、効果的な対策がわかりません。

不安全行動の分類方法と、それぞれの不安全行動に効果的な対策について教えてください。

【回答】不安全行動をヒューマンエラーと考え、それらを「意図的な行動」と「意図的ではない行動」に分類し、さらにそれらを「ミステイク」「規律違反」「スリップ」「ラプス」に分類する方法があります。

不安全行動をヒューマンエラーと考え、まず、「意図的な行動」と「意図的ではない行動」に分類できます。「意図的な行動」は「ミステイク」と「規律違反」に分類ができます。「意図的ではない行動」は「スリップ」と「ラプス」に分類できます。

不安全行動の分類とその対策について解説

不安全行動の4つの分類

不安全行動には、「意図的な行動」と「意図的ではない行動」があります。

「意図的な行動」とは、「正しい行動をしたつもりだったが、危険な間違った行動だった」というパターンや、「やってはいけない行動だとわかっていながら、これくらいなら大丈夫と考えて不安全行動を行う」というパターンがあります。

「正しい行動をしたつもりだったが、危険な間違った行動だった」というパターンを「ミステイク」と言います。企図自体の誤りであり、やろうとした行動自体が誤りだったというパターンです。

「やってはいけない行動だとわかっていながら、これくらいなら大丈夫と考えて不安全行動を行う」というパターンを「規律違反」と言います。やってはいけないことをしてしまう、ルール違反を犯す、そのような不安全行動のパターンです。

「意図的ではない行動」には、「行動をしたが、自分の意志とは反して失敗した」というパターンや「本当はしなければならない行動を忘れて、失敗した」というパターンがあります。

「行動をしたが、自分の意志とは反して失敗した」というパターンを、「スリップ」と言います。自分がやろうとしたことができなかった、手が滑った、目測を誤った、などのパターンの不安全行動です。

「本当はしなければならない行動を忘れて、失敗した」というパターンは「ラプス」と言います。ぼーっとしていた、うっかりして見過ごした、忘れていた、といったパターンの不安全行動です。

ミステイクの解説と対策例の紹介

「ミステイク」は企図の誤りであり、本来はやってはいけない・やるべきではない行動を、本人は正しいと信じてやってしまったということになります。

「ミステイク」が発生する背景としては、正しい行動を知らなかった場合やその行動の危険性を理解していなかった場合などが考えられ、業務等の経験・習熟度が低い新人などが「ミステイク」を起こしやすいと言えます。

「ミステイク」を防ぐための対策のポイントは、「ミステイク」は「正しいと思って行動したにも関わらず結果的に失敗だった」ということを理解することが大切です。「なぜその行動を正しいと思ったのか?」という部分に対策を打つべきポイントがあります。「正しいと思って行動したにも関わらず失敗した」という不安全行動への有効な対策手法として、「失敗学」があります。

失敗学は、失敗の背景にある「人間の心理・行動」に着目し、失敗から教訓を得ることで、類似した失敗を未然防止する手法です。失敗学では以下の3つのステップを実施することで、失敗から学び類似事例の未然防止を図ります

1. 失敗を主観的視点で認知する

2. 主観的事実を一般化して、教訓を得る

3. 教訓を個々に当てはめ、失敗の未然防止を行う

失敗学の詳細については様々な書籍等がありますのでそれらで失敗学を学び、「ミステイク」への対策を実行してみてはかがでしょうか?

規律違反の解説と対策例の紹介

「規律違反」はルールを逸脱した行為であり、「やってはいけないとわかっていながら行動した」ということになります。

「規律違反」が発生する背景としては、「そのルールの意味・重要性を理解していない」「職場全体の風土の問題」「そもそもルールを守る意思がない」といった状況が考えられます。「規律違反」を起こしやすい人は、どちらかというと業務等に慣れたベテランであり、慢心によるものと言えます。

「規律違反」の対策のポイントは「なぜルールを逸脱した行動を行ったのか?」ということを十分に分析する必要があります。「本人の気持ちの問題」「職場の風土の問題」と考えがちですが、そこで思考が止まってしまうのは不十分です。規律違反の行動を撲滅するためには、人間の行動を科学的に分析する必要があります。

人間の行動を科学的に分析する学問として「行動分析学」という分野があります。「行動分析学」は心理学の1つですが、一般的な心理学のイメージとはかけ離れた学問です。「行動分析学」においては、人間の行動の原因を「心」とは考えません。人間の行動を「個体」と「環境」の相互作用と考えます。

行動分析学の詳細についても書籍や論文等がありますので、それらで行動分析学を学び、「規律違反」への対策を検討してみてはいかがでしょうか?

スリップの解説と対策例の紹介

「スリップ」は自分の思い通りに行動ができなかったという事例であり、「自分がやろうとしたことができずに失敗した」ということになります。

「スリップ」が発生する背景としては、「本人の実力不足」や「業務の難易度が高い」といった状況が考えられます。「スリップ」は行動のミスなので、行動の習熟度が上がれば発生しにくくなります。そのため、新人の方が「スリップ」は発生しやすいと言えますが、ベテランも加齢に伴う身体能力の低下により「スリップ」が発生します。

「スリップ」の対策のポイントは「本人がやろうとしたことができなかった」という点を理解することです。「スリップ」を防ぐためには、行動の習熟度を上げるか、行動の難易度を下げるしかありません。また、人間が行動する以上、「スリップ」をゼロにすることは不可能と言えます。

「スリップ」の対策を進めるうえで科学的・工学的な対策としては「フールプルーフ」「フェールセーフ」の考え方を導入した作業設計を行うことが効果的です。「フールプルーフ」とは、「誰が使っても安全」となるような設計思想であり、フール(愚か者)が使ってもプルーフ(耐える)ことができるように設計するという意味になります。「フェールセーフ」とは、「機械が壊れても安全」になるような設計思想であり、フェール(障害が発生)してもセーフ(安全)になるという意味です。

「フールプルーフ」「フェールセーフ」は、機械設計の分野の考え方になりますので、それらを学び「スリップ」への対策を検討してみてはいかがでしょうか?

ラプスの解説と対策

「ラプス」はやらなけらばならないことを忘れていたという事例であり、「うっかり忘れて失敗した」ということになります。

「ラプス」が発生する背景や対策については、上記の「スリップ」とほぼ同様と言えます。

「スリップ」「ラプス」共に、「本人が意図していない失敗」です。そのため、背景や対策について、人に依存した対策は限界があり、工学的な対策が必要と言えます。

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