【質問】作業環境測定のB測定とは何ですか?
作業環境測定で出てくるB測定とはどのような測定ですか?B測定の定義はなんですか?
【回答】B測定の定義は作業環境評価基準第2条第1項第2号に記載されています。
B測定は、A測定の結果を評価するだけでは労働者の有害物質への大きなばく露の危険性を見逃す恐れがあると考えられる作業が存在する場合に、A測定を補完するための測定です。
B測定の定義は作業環境評価基準第2条第1項第2号に記載されています。
B測定の定義
B測定の定義について、作業環境評価基準第2条第1項第2号に定義が記載されています。
測定結果の評価
A測定及びB測定(作業環境測定基準第2条第1項第2号の2の規定により行う測定をいう。以下同じ)を行った場合
作業環境測定評価基準第2条第1項第2号(抜粋)
上記の「作業環境測定基準第2条第1項第2号の2の規定」は以下のとおりです。
作業環境測定基準第2条第1項第2号の2
作業環境測定基準第2条第1項第2号の2は以下のとおりです。
土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、前3号に定める測定のほか、当該作業が行われる時間のうち、空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと。
作業環境測定基準第2条 第1項第2号の2
発散源に近接する場所における作業について
「発散源に近接する場所における作業」について、昭和59年4月13日基発第182号に記載があります。
B測定が必要とされる「発散源に近接する場所における作業」には次のような作業があること。
①発散源と共に労働者が移動しながら行う作業
②原材料等の投入、設備の点検等間けつ的に有害物の発散を伴う作業
③有害物を発散するおそれのある装置、設備等の近くで行う作業
昭和59年4月13日基発第182号
最も高くなると思われる時間について
「最も高くなると思われる時間」について、昭和59年4月13日基発第182号に記載があります。
「最も高くなると思われる時間」とは、発散源に近接する場所における作業が行われている時間のうち気中有害物質の濃度が最も高くなることが、生産工程、作業態様又は作業環境に関する情報及びこれらに関する過去のデータ等から推定される時間をいうものであること。
昭和59年4月13日基発第182号
当該作業が行われる位置について
「当該作業が行われる位置」について、昭和59年4月13日基発第182号に記載があります。
「当該作業が行われる位置」とは、発散源に近接する場所における作業が行われる位置をいい、A測定と同様に床上50cm以上150cm以下の範囲で、作業の実態に応じて選定することが望ましいこと。
昭和59年4月13日基発第182号
B測定の定義についての補足説明
B測定の定義についての補足説明が昭和63年9月16日基発第605号に記載されています。
「B測定」とは、作業環境測定基準第2条第1項第2号の2の規定により行う測定、すなわち単位作業場所において、労働者が有害物質の発生源と共に移動する場合等A測定の結果を評価するだけでは労働者の有害物質への大きなばく露の危険性を見逃す恐れがあると考えられる作業が存在する場合に、当該単位作業場所について行うA測定を補完するための測定であること。
昭和63年9月16日基発第605号
B測定の必要な作業場
生産工程、作業方法、有害物質の発散状況などによっては、単位作業場所におけるA測定のみでは、労働者の有害物質への大きなばく露を受ける可能性のある作業を見過ごす恐れがあります。そのため、単位作業場所の中で有害物質の発散源に近接する以下のような作業を行う場所においては、A測定に追加して、濃度が高いと判断される作業位置と時間における環境空気中濃度の測定、すなわちB測定を行います。
- 発生源とともに労働者が移動しながら行う作業(移動作業)
- 原材料の投入、設備の点検等間けつ的に有害物の発散を伴う作業(間けつ作業)
- 有害物を発散する恐れのある装置、設備等の近くで行う作業(近接作業)
なお、B測定はA測定を補完するための測定です。必ずしも全ての単位作業場所で実施しなければならないということではありません。
B測定の測点の決め方
B測定の測点の決め方は、上記の法令に記載されています。要約すると、以下のような留意事項があります。
- A測定を実施する単位作業場所内の生産工程、作業方法及び有害物質の発散状況などから判断して、当該有害物質の環境空気中濃度が最大となると考えられる作業位置とその時間をB測定とします。
- 環境空気中濃度が高いと思われる労働者の作業位置が複数ある場合には、取扱製品の大小や形状などによる労働者の作業姿勢の変化、労働者の体格や癖、作業熟練度の相違、有害物質の取扱量や発散量の相違、気流の向きなどによって濃度が異なります。そのため、B測定点を決定するに当たっては、これらのことを検討してどの作業位置が最大になるかを予想して測定を行います。どの作業位置が最大になるかを予想できない場合には、それらの全ての作業位置で測定を行い、最大の測定値をB測定値とします。
- B測定の高さは、A測定点の高さと同様、床上50㎝以上150㎝以下の範囲で、作業の実態に応じて選定します。
B測定の実施方法
B測定の実施方法の留意事項は以下のとおりです。
- B測定は、環境空気中濃度が最大になると考えられる作業位置における測定であって、個人暴露濃度の測定ではありません。そのため、測定時に労働者がいなくても、労働者が立ち入るならば、その作業位置で測定を行います。
- 発生源とともに労働者が移動しながら行う作業の場合には、労働者の作業位置が変わるので、作業位置の移動に沿って測定を行います。
- 環境空気中濃度が最大になると考えられる作業が、A測定の実施時間内に行われない場合には、B測定はA測定の実施時間とは別に、その作業が行われる時間に実施しても差し支えありません。
- B測定のサンプリング時間は継続した10分間とします。
- B測定のサンプリング方法および分析方法は、A測定と同じ方法を用います。
- B測定にデジタル粉じん計を用いる場合は、粉じん計を10分間連続して作動させます。10分間未満でしか作動できない機種は、繰り返し測定で10分間作動させて、それぞれの測定値の算術平均値をB測定値とします。なお、この繰り返し測定を行う場合の1回当たりの作動時間は全て同一にする必要があります。
- 相対濃度指示方法を用いてB測定を行う場合の質量能動変換係数は、その単位作業場所内で行われた平衡測定から求められた質量濃度変換係数を使います。
- B測定に検知管を用いる場合は、使用する検知管は5本程度を目安とします。測定は10分間連続して行い、5本用いても測定時間の合計が10分間に満たない場合は、10分の間に測定時間を均等に分布させます。測定時間の合計が10分を超えてしう場合は、10分経ったときに使用している検知管の測定値までを算術平均値の計算に使用します。
- B測定に真空捕集瓶を用いる場合は、使用する捕集瓶は5本程度を目安とします。試料採取が10分に満たない場合は、10分の間に採取時間を均等に分布させます。採取時間の合計が10分を超えてしう場合は、10分経ったときに使用している真空捕集瓶までとします。
- B測定に圧電天秤方式の測定器を用いる場合は、測定時間を2分に合わせて連続して5回測定を行い、測定値は5回の算術平均値とします。
参考文献
作業環境測定のためのデザイン・サンプリングの実務A・B測定編(公益社団法人 日本作業環境測定協会)