【質問】固体捕集方法とはどのようなサンプリング方法ですか?
作業環境測定の「固体捕集方法」とはどのようなサンプリング方法ですか?
【回答】固体捕集方法について、作業環境測定基準第1条に定義が記載されています
固体捕集方法の定義は、作業環境測定基準第1条に記載されています。
固体捕集方法は、試料を「シリカゲル」「活性炭」「ポーラスポリマー」などに吸着させるサンプリング方法です。
固体捕集方法とは
固体捕集方法とは、試料空気を固体捕集層に通し、ガス状物質を固体粒子などに捕集する方法です。
固体捕集方法で捕集されたガス状物質は、脱着させて、ガスクロマトグラフ分析方法や吸光光度分析方法等により分析を行います。
固体捕集方法の定義
固体捕集方法の定義について、作業環境測定基準第1条に定義が記載されています。
固体捕集方法
試料空気を個体の粒子の層を通じて吸引すること等により吸着等をさせて、当該固体の粒子に測定しようとする物を捕集する方法をいう。
作業環境測定基準第1条
また、上記「作業環境測定基準第1条」の「固体捕集方法」「固体の粒子」「試料空気を固体の粒子の層を通して吸引すること等」「吸着等」について、「昭和51年6月14日 基発第454号」に解説が記載されています。
固体捕集方法について
「固体捕集方法」の例が「昭和51年6月14日 基発第454号」に記載されています。
第2号の「固体捕集方法」には、次の図で示すような方法があること。
昭和51年6月14日 基発第454号
固体の粒子について
「個体の粒子」について、「昭和51年6月14日 基発第454号」に記載されています。
第2号の「固体の粒子」には、活性炭、シリカゲル、モレキュラーシーブ等の粒子があること
昭和51年6月14日 基発第454号
試料空気を固体の粒子の層を通して吸引すること等について
「試料空気を固体の粒子の層を通して吸引すること等」について、「昭和51年6月14日 基発第454号」に記載されています。
第2号「試料空気を固体の粒子の層を通して吸引すること等」の「等」には、試料空気を固体の粒子の層に押し込むこと、試料空気を吸引し又は押し込むことなく単に固体の粒子と接触させること、試料空気をシルバーウール・ゴールドウール等の金属繊維の層を通じて吸引すること等が含まれること。
昭和51年6月14日 基発第454号
吸着等について
「吸着等」について、「昭和51年6月14日 基発第454号」に記載されています。
第2号の「吸着等」の「等」には、反応が含まれること。
昭和51年6月14日 基発第454号
捕集方法の種類
固体捕集層は、対象物質に合わせて「シリカゲル」「活性炭」「ポーラスポリマー」などが用いられます。
シリカゲルによる捕集
シリカゲルは、極性の強いガス上物質の捕集に有効です。しかし、水に対する吸着力が強いため、シリカゲルの水分含有量によって測定対象物質の吸着容量にかなりの差を生じることがあります。
このため、ガス状物質の捕集には100〜110℃で約1時間加熱して活性化したシリカゲルを用います。
測定対象物によっては、シリカゲル充填管の空気吸入口に脱水剤を詰めたガラス管を接続して、空気中の水分を除いて試料採取することがあります。この際に使用する脱水剤は、測定対象物を吸着しないものを選択します。
シリカゲルに捕集した試料は、適当な溶媒中に溶出させ、必要があれば溶出液を濃縮したのち、溶媒で一定量に調整して試料液とします。
活性炭による捕集
活性炭は、その種類及び活性化の条件によって吸着特性が異なります。一般に無極性有機溶剤などに対する吸着力が強いです。
活性炭の活性化は、乾燥した空気または窒素の気流中で、約200℃での加熱、脱水によることが多いです。
活性炭にガス状物質を捕集する場合には、空気中の水分の除去や、補修率を高めるための冷却を行う必要はありません。
使用する活性炭量を多くすると補集した試料の脱着が困難になります、そのため、測定対象物質の回収を考慮して、捕集に必要な活性炭量を定めておくことが必要です。また、活性炭に捕集した試料の脱着については、対象物質と脱着溶媒の組み合わせごとに脱着率を検討しその結果に基づいて測定操作の条件を定めます。
ポーラスポリマーによる捕集
ポーラスポリマービーズは活性炭に比べ、有機化合物蒸気に対する捕集容量は小さいが、表面が不活性なため不安定な化合物の捕集に用いても捕集管内で重合や酸化などの化学反応による変質が起こりにくいという利点があります。そのため、重合や酸化しやすい物質の捕集に使用される例が多いです。
固体捕集ー加熱脱着ーパージトラップ法
固体捕集ー加熱脱着ーパージトラップ法は捕集管にキャリアガスを流しながら、温度制御付きの加熱路で加熱し、捕集管から脱着した対象物質をパージトラップ機構で冷却捕集後再加熱し、トラップした物質を急速に気化させ、ガスクロマトグラフ分析する方法です。
この方法の利点は、濃縮率が高くなり、空気中の低濃度成分の高感度分析が可能になることです。また、サンプルの前処理操作が必要ない、脱着溶媒を使用しないという点もあります。
欠点としては、熱分解する可能性がある物質、沸点が高く加熱脱着率が低い物質、補修剤との反応が考えられる物質には適用できないことがあります。