ガスクロクロマトグラフ分析法とはどのような分析方法ですか?

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【質問】作業環境測定で出てくる「ガスクロマトグラフ分析法」とは何ですか?

作業環境測定の分析方法で出てくる「ガスクロマトグラフ分析法」や「ガスマトグラフィー」とは何ですか?どのような分析方法ですか?

【回答】移動相としてガスを使用したクロマトグラフ分析法です

移動相としてガスを使用したクロマトグラフィーであり、多成分混合物から各成分を分離分析する方法です。

「ガスマトグラフ分析法」は「ガスマトグラフィー」とも言います。

ガスクロマトグラフィーとは

ガスマトグラフィーとはクロマトグラフ分析のうち、移動相として気体を用いる方法です。

気体試料や比較的低温で気体となる液体または固体試料について分離分析を行う方法です。

吸着剤を固体相として用いる気ー固クロマトグラフィーと固体の表面位保持した液体を固体相として用いる気ー液クロマトグラフィーとがあります。

気ー固クロマトグラフィーは気体の無機化合物や低沸点の炭素化合物などに用いられます。

気ー液クロマトグラフィーは有機化合物に広く用いられます。

気ー液クロマトグラフィーは気ー固クロマトグラフィーに比べて広範囲かつ高頻度で用いられます。

ガスクロマトグラフィーの長所

ガスクロマトグラフィーの長所は以下のような点があります。

  1. 分離能力に優れ沸点の近い物質の分離も可能です。
  2. 適用範囲が広いです。気体はもちろん、沸点300℃程度まで化合物についても適用可能です。
  3. 原理、装置、操作が簡単です。特別な理論や知識が不要です。また、他の分析機器に比べて装置が単純で、保守が容易です。
  4. 試料が少量でよく、液体で1〜10μL、気体で0.2〜10mL程度で十分です。

ガスクロマトグラフィーの短所

ガスクロマトグラフィーの短所には以下のような点があります。

  1. 試料の沸点が比較的低温である必要があります。沸点を待たずに分解する化合物には適用できません。
  2. 物質を同定するための情報量が少ないです。1成分に1個のピークしか示さず、その形状は同形です。

クロマトグラフ分析とは

クロマトグラフとは、試料中の成分の分配や吸着の違いによる2相間への分布の差異を利用して、多成分混合物から各成分を分離分析する方法です。

ガスクロマトグラフとは

ガスクロマトグラムを測定する装置をガスクロマトグラフと言います。

ガスクロマトグラフは「試料導入部」「カラム」「検出器」などから構成され、試料は「キャリヤーガス」によって運ばれます。

キャリヤーガスとは

キャリヤーガスとは、試料をカラム等に運搬するガスです。

キャリヤーガスには、H₂、N₂、He等の不活性気体が用いられます。

試料導入部

液体試料は、マイクロシリンジを用いてカラム直前にある試料気化室に導入します。

試料が気体の場合は、ガスタイトシリンジまたはガスサンプラーによって導入します。

固体試料は一般に適当な溶媒に溶かして導入します。

カラム

管に充てん剤を詰めた充てんカラムが一般的に使用されます。

充てん剤は吸着型、分配型とに大別されます。

吸着剤としてはシリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブ等が用いられます。吸着型充てん剤は気ー固平行に達する時間が短いこと、高いカラム温度で測定できることなどの長所を持っており、無機ガスや低級炭化水素などの分離に利用されます。しかし、試料の導入体積を少量にする必要があること、試料やキャリヤーガス中に含まれる水が吸着剤の吸着性に大きな影響を及ぼすことなどから、分配型充てん剤に比べて再現性に劣ります。

分配型の充てん剤としては、担体の表面に液体を均一に含ませた粒状物質が用いられます。

検出器

多くの検出器が考案されており、特に重要な5つの検出器の原理と特徴を記載します。

熱伝導度検出器(TCD)

成分気体とキャリヤーガスとの熱伝導率の差を電気抵抗として測定して検知します。

キャリヤーガスと熱伝導率が異なる全ての成分が検出できます。

感度はキャリヤーガスト成分気体との熱伝導率の差が大きいほど高くなります。電気抵抗を測定する金属フィラメントにはタングステンやレニウムータングステン合金が用いられます。

水素炎イオン化検出器(FID)

カラムで分離した成分を水素および空気と混合し、燃焼します。フレームの両側にある電極に直流電圧をかけ、水素炎中で発生した炭素原子を含むイオンによって生じる電流を測定します。同族体では、イオン発生量は成分中に含まれる炭素数にほぼ比例します。ほとんどの有機化合物を高感度に検出できますが、カルボニル基炭素はイオン化されません。また、希ガスおよびH₂、N₂、O₂、H₂O、NH₃、 NO、NO₂、N₂O、CO、CO₂、H₂S、SO₂、CS₂等の無機ガスは検出されません。感度はTCD(熱伝導検出器)の数千倍に達し、広い直線領域を持つ応答を示すので、高感度検出器として広く普及しています。

光イオン化検出器(PID)

ヘリウム、アルゴンなどの希ガスや水素などの放電ガスをグロー放電室に導入して放電させます。このとき、放射される紫外線によって試料成分がイオン化される現象を利用しています。種々の有機化合物をイオン化電圧の違いを利用して検出することができますが、イオン化エネルギーの高い無機ガスの検出は困難です。検出感度と試料濃度に対する測定されるイオン電流の直線性はFID(水素炎イオン化検出器)に匹敵します。

電子捕獲検出器(ECD)

放射線源をもつ電極と正極の間に電圧をかけ、これにキャリヤーガストしてN₂を流すと、N₂は陽イオンと電子とに分離されるので電流が流れます。ここにハロゲン化合物のような電子に対する親和力の大きな成分が入ってくると、電子はそれに捕獲されるので電流は減少します。この電流減少を定量に用います。ハロゲン化物、ニトロ化合物等の親電子化合物を選択的、高感度に検出します。残留農薬、PCB、塩化アルキリ水銀等の分析に用いられます。

炎光光度検出器(FPD)

フレーム分光分析を利用した検出器であり、FID(水素炎イオン化検出器)とは水素が過剰でフレームが還元炎である点が異なります。カラムで分離された硫黄化合物やリン化合物がこのフレームの中に送り込まれると、それぞれに特有な波長の光を発行します。これを分光した後に定量します。硫黄化合物やリン化合物に対して選択的で高感度です。残留農薬、悪臭物質、石油製品中の硫黄成分等の定量に用いられます。

参考文献

作業環境測定のための分析概論(公益社団法人日本作用環境測定協会)

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