【質問】作業環境測定で出てくる「吸光光度分析」とは何ですか?
作業環境測定で出てくる「吸光光度分析方法」とは何ですか?どのような分析方法ですか?
【回答】吸光光度分析は作業環境測定基準に定められた分析方法の1つです。
吸光光度分析は、試料に光を通過させて光が吸収する割合を測定して定量する方法です。
作業環境測定基準に明記された分析方法の1つです。
吸光光度分析方法とは
吸光光度分析とは、紫外線や可視光線の単色光(単一の波長の光)を試料に通過させ、その波長の光が吸収される割合を測定することによって、金属イオンや無機化合物および有機化合物を定量する方法です。
吸光光度分析の特徴
吸光光度分析は、装置が比較的安価で、微量成分を迅速に分析でき、分析操作もやさしいことから、無機、有機化合物を問わず、光を吸収する多くの化合物について広く用いられます。
吸光光度分析の留意事項
試料が固体の場合には、適当な溶媒に溶かして溶液にする必要があります。光の吸収が弱い・無色の試料の場合は、適切な試薬(発色剤)を加えて滴定に適した色に呈色させる必要があります。
また、分析を妨害する成分が共存する場合は、あらかじめこれを分離、除去するか、適当な試薬を加えて、妨害しない化学種に変えるマスキングなどの操作が必要になります。
吸光光度分析の装置の基本構成
吸光光度分析の装置は基本的に「光源」「波長選択部」「試料セル部」「検出器」「表示記録部」から構成されます。
光源部
光源としては、可視領域(350〜800nm)測定にはタングステンランプが用いられます。紫外領域(200〜400nm)の測定には重水素放電管が用いられます。
波長選択部
波長選択部は、光源から放射される光の中から特定の波長だけを選別するもので、モノクロメーターと呼ばれています。これにはプリズムまたは回析格子が用いられます。回析格子は波長選択能が高く、しかも波長分解能波長によらず一定なので、近年はプリズムに替わってほとんどのモノクロメーターには回折格子が用いられています。回折格子は、金属またはガラスの表面に800〜1200本/nmの溝を刻んだもので、入射した光がこれに当たって回折する現象を利用して分光しています。
試料セル部
試料セル部は、ダブルビーム方式の装置では、測定試料と対象試料とをモノクロメーターから出てきた光に当てるため、測定セルおよび対照セルを固定するためのセルホルダーが設置されています。標準的な測定セルは角形で、一般には光路長が1cmのものが広く用いられています。セルは測定波長での高い透明性が必要なので、紫外領域では石英セルが、可視領域では石英またはガラスセルが用いられます。
検出器
一般に光の強さに応じた電流を発生する光電子倍増管が用いられます。得られた電流は倍増されて表示記録部に送られます。
表示記録部
得られた電流を処理して、最終的には透過百分率または吸光度を表示します。
吸光光度分析が関連する法令
吸光光度分析が登場する法令を紹介します。
令第21条第7号に掲げる作業場の濃度の測定は、別表第1の上欄に掲げる物の種類に応じて、それぞれ同表の中欄に掲げる試料採取方法又はこれと同等以上の性能を有する試料採取方法および同表の下欄に掲げる分析方法又はこれと同等以上の性能を有する分析方法によらなければならない。
作業環境測定基準第10条(抜粋)
別表第1(第10条関係)(抜粋)
物の種類 | 試料採取方法 | 分析方法 |
ジクロルベンジン及びその塩 | 液体捕集方法 | 吸光光度分析方法 |
参考文献
作業環境測定のための分析概論(公益社団法人日本作用環境測定協会)