【質問】作業環境測定のA測定とは何ですか?
作業環境測定で出てくるA測定とはどのような測定ですか?
A測定の定義は何ですか?
【回答】A測定の定義について、作業環境評価基準第2条に記載されています
A測定は単位作業場所における気中有害物質の平均的な状態を把握するための測定です。
A測定の定義
A測定の定義について、作業環境評価基準第2条第1項第1号に定義が記載されています。
測定結果の評価
A測定(作業環境測定基準第2条第1項第1号から第2号までの規定により行う測定をいう。以下同じ)のみを行った場合
作業環境測定評価基準第2条第1項第1号(抜粋)
上記の「作業環境測定基準第2条第1項第1号から第2号までの規定」は以下のとおりです。
作業環境測定基準第2条第1項第1号
作業環境測定基準第2条第1項第1号は以下のとおりです。
測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。以下同じ。)の床面上に6メートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上50センチメートル以上150センチメートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。ただし、単位作業場所における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、測定点に係る交点は、当該単位作業場所の床面上に六メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とすることができる。
作業環境測定基準第2条 第1項第1号
作業環境測定基準第2条第1項第1の2号
作業環境測定基準第2条第1項第1の2号は以下のとおりです。
前号の規定に関わらず、同号の規定により測定点が5に満たないこととなる場合にあっても、測定点は単位作業場所について5以上とすること。ただし、単位作業場所が著しく狭い場合にあって、当該単位作業場所における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、この限りではない。
作業環境測定基準第2条第1項第1の2号
作業環境測定基準第2条第1項第2号
作業環境測定基準第2条第1項第2号は以下のとおりです。
前2号の測定は、作業が定常的に行われている時間に行うこと。
作業環境測定基準第2条第1項第2号
A測定の定義についての補足説明
A測定の定義についての補足説明が昭和63年9月16日基発第605号に記載されています。
「A測定」とは、作業環境測定基準第2条第1項第1号から第2号までの規定により行う測定、すなわち単位作業場所における気中有害物質の平均的な状態を把握するための測定をいうこと。
昭和63年9月16日基発第605号
A測定点の設定方法
A測定は、測定点の抽出が作為的ではなく、単位作業場所の区域全体にできるだけ均一に分布する必要があります。以下に、作業環境測定基準第2条に基づくA測定の測定点の設定方法を示します。
- 単位作業場所の中に無作為に5以上の測定点を選びます。床上に6m以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上50㎝以上150㎝以下の位置を測定点とします。線の間隔は原則として6m以下の任意の間隔で良いが、等間隔の原則を崩してはいけません。
- 単位作業場所が直線で区切れない場合には、平行線は単位作業場所の形に沿って曲率を持ってもよい。
- 縦あるいは横の線の間隔と規則正しく配列されている有害物質の発生源の間隔とが一致する場合には、縦あるいは横の線の感覚が発生源の間隔と一致しないようにします。
- 測定点が、生産設備や環境設備などと重なり、労働者の呼吸域となることが考えられない場合は、測定点から除くことができます。ただし、労働者が設備の上に乗り出すなどにより労働者の呼吸域となる可能性がある場合は、測定点としなければなりません。
- 単位作業場所の範囲が狭く、6m以下の間隔の縦の線と横の線の交点では、測定点の数が5未満となるときは、4つの測定点の中心に測定点を設ける等により測定点の数が5にすることができます。
- 単位の作業場所の範囲が30m²以下等、著しく狭い場合であって、単位作業場所における有害物質の濃度がほぼ均一であることが明らかな場合には、測定点の数は5未満とすることができます。ただし、各測定点で繰り返し測定を行い、1単位作業場所における測定値の総数が5以上になるようにしなければなりません。また、各測定点における繰り返し測定の回数を同一にする必要があります。
- 各測定点や同一測定点において繰り返しの測定を行う場合、測定の時間間隔についても等間隔に行う必要があります。
- 測定点の高さは、作業中の労働者の呼吸域における環境空気中能動を把握することを考慮して、床上50㎝以上150㎝以下とします。
- 建屋の都合により、縦の線と横の線が直行しなくても差し支えありません。
A測定の実施方法
環境空気中の有害物質濃度の変動要因には、空間変動、日内変動、および日間変動があります。一般的に、日内変動は空間変動より小さいので、各測定点ごとの測定時間を長くするほど、空間変動の中に日内変動は入ります。そのため、A測定の結果の中に各測点ごとのサンプリング時刻の相違による有害物質の濃度変動が反映されるように、以下の点に留意します。
- 1単位作業場所における全測定点について、サンプリングが1作業日中に終了するようにします。測定点の数が多く、1作業日中にサンプリングが終了できない場合は、単位作業場所の範囲をさらにいくつかの単位作業場所に区分けし、測定点の数が1日のサンプリングの可能な数より多くならないようにします。
- 測定点を順次サンプリングする方法による場合は、有害物質の時間的変動(日内変動)を加味した測定結果を得るため、単位作業場所ごとに最初の測定点でのサンプリング開始から最後の測定点のサンプリング終了までの時間が、1時間以上になるようにします。
- 1測定点のサンプリングに1時間以上を要する場合には、全測定点において同時測定を行うことができます。
- 試料の採取方法は、測定基準に定められた方法で行います。
- 粉じんの濃度の測定は、全測定点を相対濃度計で測定し、相対濃度に併行測定によって得られた質量濃度変換係数を乗じて、各々の測定点における質量濃度を測定する方法を用いることができます。(相対濃度指示法)この場合、単位作業場所における1以上の場所において質量濃度変換係数を求めるために質量濃度測定と相対濃度測定を同時に行う、併行測定を行う必要があります。
A測定のサンプリング時間の設定
作業環境測定のA測定のサンプリング時間について、作業環境測定基準第2条第1項第3号に記載があります。
粉じん濃度等の測定
一の測定点における試料空気の採取時間は、10分間以上の継続した時間とすること。ただし、相対濃度指示方法による測定については、この限りではない
作業環境測定基準第2条第1項第3号
また、上記の「作業環境測定基準第2条第1項第3号」の内容について、「昭和57年6月14日基発第412号、昭和63年9月16日基発第604号」で解説が記載されています。
2 第1項第3号本文は、空気中の粉じんの濃度は、通常短時間のうちに著しく変動するので、短時間の試料空気の採取による当該粉じんの濃度をもって測定値とすることは、適切ではないことから、一の測定点における測定値が10分間以上の平均濃度を表すように10分間以上継続して試料空気を採取することを想定したものであること
なお、この場合の試料空気の採取量は、定量する粉じんの下限濃度、測定機器の感度等により決定されるものであること。
また、粉塵の濃度の日内変動を考慮して、1単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を1時間以上とするよう指導すること。
昭和57年6月14日基発第412号、昭和63年9月16日基発第604号
3 第1項第3号ただし書きは、相対濃度指示方法による場合については、その原理的制約等から一の測定点における試料空気の採取時間を10分間未満として差し支えないことを規定したものであること。
ただし、この場合には、1単位作業場所における全測点の数が、10分間を一の測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上とするとともに、試料空気の採取の間隔を調整することにより、1単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を1時間以上となるよう指導すること。
昭和57年6月14日基発第412号、昭和63年9月16日基発第604号
上記の内容をまとめると、以下のような留意事項となります。
- 環境空気中の有害物質濃度は、測定を行う測定点ごとに変動するだけではなく、時間的にも変動を示します。ごく短時間のサンプリングによる濃度をもって測定値とすることは適切ではありません。しかし、サンプリング時間が長いと測定値の安定性は良くなりますが、時間が長すぎても測定点ごとの変動と時間変動を見落とすことになります。また、環境空気中から採取した試料を秤量したり、分析したりするする方法により濃度を測定する際は、定量下限値による制約から、10分間以上ののサンプリングを必要とする場合が多いです。このようなことから、1測定点ごとにサンプリング時間は原則として継続した10分間以上とします。
- 1測定点におけるサンプリング時間は、管理濃度の10分の1以下の環境空気中の有害物質濃度を、十分な精度をもって定量するために必要な試料空気量を採取できる時間を設定します。
- 測定の感度や精度がサンプリング時間と関係のないような方法、例えば、捕集袋を用いて直接捕集方法をで試料空気を採取するときは、技術的に無理のない範囲でサンプリング時間が10分以上になるように工夫します。
- 使用する捕集器具や測定機器の原理的な制約から10分間以上のサンプリングが合理的ではない場合、例えば、真空捕集瓶を使用してガス状物質を捕集する場合や、検知管方式による測定機器、粉塵の相対濃度計を用いる場合にはサンプリング時間は10分間未満でも良い。ただし、これらの場合には、1単位作業場所における全測定点の数が、10分間を1測定点における試料空気の採取時間で除した値の数以上となるようにするとともに、試料空気の採取の間隔を調整することにより、1単位作業場所における試料空気の採取開始から終了までの時間を1時間以上とします。
参考文献
作業環境測定のためのデザイン・サンプリングの実務A・B測定編(公益社団法人 日本作業環境測定協会)